マウスピースを使う人は、今や矯正中の若者やアスリートだけではありません。子どもの歯並びケア、就寝中の歯ぎしり予防、いびき対策、さらには入れ歯代わりの保護用マウスピースなど、世代を問わず多くの人にとって身近な存在となっています。
その一方で、使用者の年齢や体質に応じた「ケアの工夫」が求められているのも事実です。特に気になりやすいのが、マウスピースに付着する“臭い”の問題。家族全員が同じように使っていても、「なぜか自分のだけ臭う」「子どもが嫌がる」「祖父母がうまく洗えない」といった悩みは少なくありません。
本記事では、家族でマウスピースを使用する際に押さえておきたい臭いケアの基本と、年齢や生活スタイルに合わせたケアアイテムの選び方、使い分けのポイントについて丁寧にご紹介していきます。
家族で“同じ”ケアアイテムは要注意
一見すると「同じマウスピース洗浄剤をみんなで共有すればラク」と思われがちですが、実際には“誰にとってもベスト”な洗浄方法は存在しません。というのも、年齢や嗅覚の敏感さ、日常の生活リズム、さらには口内の健康状態によって、適したケア方法が異なるためです。
たとえば、香りの強い洗浄剤は、大人には清涼感があって好まれても、子どもにとっては刺激が強すぎることもあります。また、高齢の方の場合、手の力や視力が弱くなっているため、細かい洗浄や力を入れたブラッシングが難しく、簡単なつけ置きタイプのほうが扱いやすいこともあるでしょう。
つまり、家族でマウスピースを使用する場合は、「一人ひとりに合ったケアアイテムをどう選ぶか」「共有する際にどう使い分けるか」という視点が欠かせません。
子どもには「安全性」と「使いやすさ」が第一
子ども用のマウスピースケアで特に意識したいのが、安全性と手軽さです。誤飲や刺激への懸念を避けるためにも、香料や着色料を含まない無添加タイプの洗浄剤を選ぶことが基本となります。
また、家庭で親が洗浄を行うにしても、子ども自身にセルフケアを教えるにしても、「泡立たない」「中性である」「つけ置きだけで完了する」といった操作のシンプルさは大切なポイントです。
できれば、子どもの目線に合わせて“毎日使うものだから安心して使える”という実感をもてるようなデザインや香りの強さを調整し、楽しんで続けられる工夫をしてあげるとよいでしょう。
高齢者には「負担の少なさ」と「確実な除菌」がカギ
一方で、高齢の家族がマウスピースを使用している場合は、「手が届きにくい」「うまく洗えない」「洗い残しがある」などの不安が付きまといがちです。
そうした場合には、錠剤型の発泡洗浄剤を使ったつけ置き方式が効果的です。特別な力を必要とせず、水に溶かすだけで除菌・消臭・汚れ落としがまとめてできるため、毎日のケアのハードルを下げてくれます。
また、高齢者は口腔内の免疫力が低下しているケースもあるため、除菌性能が高く、医療向けにも使用されている成分配合の製品を選ぶと安心感が増します。清潔に保つことは、単に臭いの問題にとどまらず、誤嚥性肺炎や歯周病の予防にもつながるため、手間なく効果の高いケアが重要なのです。
「洗浄タイミング」や「保管方法」も年齢別に工夫を
マウスピースの臭いを防ぐには、洗浄アイテムそのものだけでなく、「いつ洗うか」「どこで保管するか」といったタイミングや環境の工夫も欠かせません。
たとえば、部活動後にマウスピースを使う中学生や高校生は、疲れて帰宅しそのまま放置してしまうことも多いため、使用後すぐにケースに除菌シートを敷いて持ち帰る習慣をつけさせるだけでも臭いの発生を抑えやすくなります。
一方、認知機能の低下が気になる高齢の方の場合は、**「洗ったかどうか忘れがち」「使い終わったあと放置してしまう」**といった課題が生まれやすいので、見やすい場所に洗浄ステーションを設けておく、ケアの順番をメモで貼るといった視覚的な工夫が効果的です。
家族の誰かが少し意識するだけで、全体の衛生管理がぐっと楽になるのも、家族利用ならではの強みといえます。
家族みんなで清潔を保つために
マウスピースは個人ごとの体に合わせた医療アイテムですが、ケアについては家族みんなでシェアできる知恵があります。「子どもだから簡単でいい」「大人だから丁寧に」といった一方向の考えではなく、一人ひとりの特性や生活スタイルに寄り添いながらケア用品や方法を工夫することが、長く快適に使い続けるためのポイントです。
毎日使うものだからこそ、「臭いが気にならない」「負担がない」「安心して使える」という安心感は何よりも大切です。たとえ同じ洗浄剤でも使い方や補助アイテムの組み合わせ次第で、その快適さは大きく変わります。
家族で同じテーブルを囲むように、マウスピースのケアも“共に考え、共に守る”という姿勢で取り組めば、清潔な口元と気持ちのよい毎日を、みんなで共有できるはずです。